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[レビュー] アルスエレクトロニカ・レポート 4 コンサート

September 27th, 2011 Published in レビュー&コラム  |  2 Comments

今年のアルスエレクトロニカでは、本当に多くの日本人が活躍していました。9月4日夜に開かれたコンサートGroße Konzertnacht には、ガラにも登場した和田永さん率いる《Open Reel Ensemble》 が登場。続いて、《particles》で優秀賞に輝いているアーティスト、真鍋大度さん、石橋素さんに比嘉了さんが加わり、アルスエレクトロニカならではのコラボレーション映像を披露しました。

Brucknerhaus, photo by A.Kolb

和田さんは、昨年も《Braun Tube Jazz Band》でアルスエレクトロニカに参加し、大変な注目を集めました。2度目となる今回の参加に関してコメントを寄せて頂きました。ありがとうございます。

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アルスエレクトロニカには去年に続き2度目の参加で、今年は2009年より活動している、旧式のテープレコーダーを用いて演奏行う《Open Reel Ensemble》のプロジェクトで公演を行ってきました。

パフォーマンスに使用する年季の入った古い機械は、運搬する度にどこかしらかが不調に陥るため、現地に着いて数日は連日の修理。今回は本番直前に蘇生が完了!ひやひや。海外での公演は常にトラブルとの闘い。

初登場はGalaと呼ばれるアルス賞の授賞式で、全体的には厳粛なムードの式典なのですが、その張りつめた雰囲気を”もみほぐす”役割もあって舞台にあがりました。真面目さと遊び心が同居している空気感が独特で、これはフェス全体にも言えることなのかも。

この授賞式が行われた場所が、ブルックナーハウスというクラシックでは有名なコンサートホールで、ここで期間中に行われたナイトコンサートが僕らにとってのメイン公演でした。

《Open Reel Ensemble》 - Große Konzertnacht, photo by rubra

これまで体験してきたどの場所よりも大規模な会場で、期待感と同時に場所に圧倒される感覚。しかも当日はフル・オーケストラによる演奏の後ということで、そこで演奏することの重みを感じざるを得なかったんですが、いざ音を出してみると、なんて音がイイ!PAシステムとアコースティックな空間の広がりとが、繊細さと迫力さの同居する音環境をつくり出していて、時に即興で感情的・身体的に演奏を展開していく僕らにとっては、最高に気持ちのいいフィードバックが得られた演奏体験でした。

Open Reel Ensemble》 – Große Konzertnacht, photo by rubra

フィードバックといえば、オーディエンスからも。演奏終了後には数分間のスタンディング・オベーションも起こり、公演は無事に大成功。環境に圧倒されつつも、その環境に助けられながら、特別な時間と空間を共有することができました。

その後、指揮者にとりつけられたセンサーが映像を描画していくという、真鍋大度さんとオーケストラのコラボレーションも展開し、歴史的・古典的な表現スタイルと、現代テクノロジーの魔術とが混在した舞台が織りなされていて、それはまさにヨーロッパならでは!のことだと思いました。例年貴重な交流と実験の場になっているなあと改めて感じるところ。”起源”から次の”起源”へ!

                                                              和田 永 2011年9月

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Brucknerorchester - Große Konzertnacht photo by rubra

最後に、和田さんもコメントでも紹介された真鍋大度さんとオーケストラのコラボレーションをご紹介します。

このコンサートでは、リンツのブルックナーオーケストラが、3回登場しましたが、その最後の楽曲“Mysterious Mountain op. 132‘”でコラボレーションが披露されました。オーケストラの背景にある巨大スクリーン映し出された映像に、真鍋大度さん、石橋素さん、比嘉了さんが参加されています。

今回のアルスエレクトロニカでは、CERNという素粒子物理学研究機関とのコラボレーションが発表されました(レポートで紹介)。CERNでは、史上最高のエネルギーを生み出す装置LHC により、アトラス実験が行われています。このアトラスからの観測データをリアルタイムで受信して、オーケストラの指揮者の動きを解析した結果を用いてビジュアライズするプログラムが真鍋大度さん、石橋素さん、比嘉了さんによって制作され、このコンサートで披露されたということです。科学の最先端を映し出す観測データと、伝統あるオーケストラが生み出す楽曲を融合させる試みは、2011年のアルスエレクトロニカならではのパフォーマンスだったのではないでしょうか。この様子は、アトラス実験の公式ブログでも紹介されています。

レビューでは引き続きアルスエレクトロニカの詳細レポートをお届けします。次回vol.5は今年のアルスエレクトロニカの受賞作品展「サイバーアーツ2011」をご紹介します。

《アルスエレクトロニカ・レポート》

1.今年のテーマ「origin-how it all begins」

2.オープニング(8月31日)とアルスエレクトロニカ・センター

3.受賞式典「GALA」(9月2日)

4.コンサート(9月4日)

5.サイバーアーツ展

6.  ふたつのキャンパス展

7.市内各所のイベント

8.まとめ

 




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