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[レビュー] アルスエレクトロニカ・レポート 7 市内各所のイベント

October 6th, 2011 Published in レビュー&コラム  |  6 Comments

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このレポートでは、これまで取り上げなかったサテライト会場の作品やプロジェクトをいくつかご紹介します。

リンツの大聖堂、マリーエンドーム

今回のフェスティバルでは、リンツの大聖堂、マリーエンドームが作品紹介会場として使用されました。この聖堂内の小部屋では、プリ・アルスエレクトロニカのInteractive Art 部門でHonorary Mention に選ばれた、平田オリザ、石黒浩《アンドロイド演劇『さようなら』》が上演されていました。ちなみにアルスエレクトロニカ・センターに展示中の石黒浩氏による《テレノイド》 はすでにレポート2でご紹介しています。

Mariendom Linz

鑑賞者は、厳粛な雰囲気漂う聖堂内でチケットを受け取り、狭いらせん階段をつたって舞台が設置された約100名程が入れる小部屋に通されます。舞台にはすでにアンドロイドと役者が向かい合って座っています。

病気の少女が父親に買ってもらったアンドロイド。アンドロイドは死期が迫っている主人公に詩を詠み聞かせます。その詩はまるで主人公の気持ちを映し出すかのように、 「別れ」をテーマにしています。 劇中、主人公とアンドロイドは詩について論じたり、また、人間の幸せは何 か、ロボットの本質とは何かなどを問いかけます。少女とアンドロイドによる静かな会話劇です。

約20分の公演が一日に2回、上映回ごとに、使用言語が英語、ドイツ語、日本語と異なり、それらに対応して左右のディスプレイに表示される字幕の言語も変わりま す。

平田オリザ、石黒浩《アンドロイド演劇『さようなら』》

今回、教会という空間がアンドロイド演劇の会場となったことは注目すべきでしょう。キリスト教の世界では、科学の進化に伴い誕生したクローン技術を非常に慎重に捉え、倫理的な観点から議論されてきました。アンドロイドはクローンとは異なりますが、人間の複製を作るといった観点から、2年前に石黒氏が参加したアルスエレクトロニカHUMAN NATUREのシンポジウムでは、石黒氏自身がアンドロイドをどのような存在としてとらえているのかが議論されていました。

CREATE YOUR WORLD / アルスエレクトロニカ・クオーター

CREATE YOUR WORLDは、今年から始まったアルスエレクトロニカ・フェスティバルの中で開催される若者向けのフェスティバルです。ここではu19の展覧会が開催されていました。u19とは、プリ・アルスエレクトニカの一部門で、19歳以下のオーストリア在住のクリエイターを対象にしています。ここでの展示では、段ボールが多用され、映像の展示やシアターが作られていました。

CREATE YOUR WORLD

CREATE YOUR WORLDでは、展示だけでなく、数多くのワークショップも開催されました。特設テントの中では、菅野創、山本雄平による《テクノフォンキット》のワークショップが開催されていました。《テクノフォン》は、身の回りの電気製品か発せられる光や、電磁波、電波を音として聞くことができるデバイスです。その《テクノフォン》を手軽に組み立てられるように改良された《テクノフォンキット》を使ったワークショップでした。自分で制作したデバイスを使って身近な電磁波を発見するのは、大変面白い経験だったのではないでしょうか。

ワークショップ会場の菅野さん(左)と山本さん(右)

また、同会場では日本人作家による作品を見つけることが出来ました。

例えば、設置された小さなテ-ブルを挟んで参加者二人が向かい合って立ち、その二人の身体接触が、テーブルに仕組まれたディスプレイと連動して、ゲームをすることが出来る《Ether Inductor》。

Ether Inductor/ Team Mitoh and roomoot (Marika Hayashi, Ryuma Niiyama, Takashi Mikami, Naohiko Sumimoto, Akira Tsukimori and Hironori Mizoguchi

 

そして、組み込まれたタッチパネルを操作しながら、等身大程の大きさのある装置自体を動かすことで自在に音を出すことのできる楽器《MIRAGE00》。

Mirage00/Kouji Ohno, Tetsuya Yamamoto, Nobu Miake and Toshikazu Toyama Photo by rubra

このプロジェクトには、担当の異なる4名(大野 功二さん/プロダクト取りまとめ・ソフトウェア作成、山本哲也さん/LEDと電装の作成、見明 暢さん/筐体デザイン制作、外山 敏和さん/VJ・コンテンツ作成)が参加し、アルスエレクトロニカでの紹介が実現しました。日中、晴天のリンツに注がれる陽の光はまぶしく、屋外でデモンストレーションをすると、筺体から発せられている光が見えなくなってしまいます。そのため、写真のようにテント内で展示されていましたが、あまりの暑さのために装置に不具合が起きるなど、いろいろな困難もあったようです。9月5日には STADTWERKSTATTで《MIRAGE00》を使ったパフォーマンスが披露されたということでした。

制作者の一人、見明 暢さんから今回の参加に関してコメントを頂きましたのでご紹介します。

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アルスエレクトロニカのスタッフや出展者、メディアの方々や来場者たちと距離感が非常に近く、とにかくダイレクトな意見が貰えることが刺激的でした。
また、今回私達が展示した場所は、u19の方々のスペースに近く、今後のメディアアートを牽引していく世代と多くの交流が持てたことも収穫でした。
今後は、mirage00がmirage01、02と進化するように改良を行うことと、並行して新作にもトライしていきたいと考えております。

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今月22日に、ライブイベントも行われるということです。
アルスエレクトロニカで紹介された作品は今後日本で見る機会も増えてくると思いますが、その情報を得るのがなかなか難しいと思いますので、このサイトでは適宜ご紹介していきたいと思います。

レントス美術館

アルスエレクトロニカ・センターの対岸にあるのがレントス美術館です。展覧会はフェスティバルのパスで見ることが出来ます。会期中に開催されていたのが、ギルバート&ジョージ展です。美術館に大きくユニオンジャックが掲出されていたので、不思議に思ったのですが、これはギルバート&ジョージ展に合わせた告知バナーでした。

ギルバート&ジョージはイギリスを代表する二人組のアーティストで、自分自身を生きる彫刻と称し、あらゆる作品に二人が登場します。今回の企画展は、このレントス美術館の大きな展示室に合わせて準備された特別展ということで、二人と国旗がモチーフとなった巨大なシルクスクリーンが空間一杯に展示されていました。

Lentos Kunstmuseum Linz

9月3日には、この美術館前のドナウ河畔を舞台に、クラングボルケと呼ばれる大花火大会が開催されました。

Klangwolke

クラングボルケを見学するために、市内・市外から数万人もの人々が川沿いに押し寄せます。アルスエレクトロニカ・フェスティバルに合わせて、他にも様々な催しが開催されるので、街中がお祭り気分を盛り上げます。そんな雰囲気もアルスエレクトロニカの魅力の一つでしょう。

《アルスエレクトロニカ・レポート》

1.今年のテーマ「origin-how it all begins」

2.オープニング(8月31日)とアルスエレクトロニカ・センター

3.受賞式典「GALA」(9月2日)

4.コンサート(9月4日)

5.サイバーアーツ展

6.  ふたつのキャンパス展

7.市内各所のイベント

8.まとめ

次回はいよいよ最終回です。