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[Works] 《ホリデイ》ひらのりょう

April 6th, 2012 Published in こんな作品つくりました

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第17回学生CGコンテストで最優秀賞を受賞したアニメーション作品《ホリデイ》をはじめ、omodakaのMusic Video《Hietsuki Bushi》(第15回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞受賞)を手がけ、高い注目を集める若手アニメーション作家ひらのりょうさん。独特なストーリー構成や強烈な世界観が生まれるきっかけなど、学生CGコンテスト受賞作品集のインタビューでは語りきれなかったお話をうかがいました。

「アニメーション」という表現形態を用いているきっかけを教えてください。

僕は予備校に通ってから大学に入学したわけではないので、絵がそんなに描ける方ではありませんでした。僕の所属していた多摩美術大学情報デザイン学科は、いろんな表現について勉強するコースです。僕にはプログラミングができる頭脳もなく、かといって絵の具もそんなに触ったことがなくて、一枚の絵を描ける能力もなかったけど、アニメーションなら何とかできそうだと思いました。僕にとってアニメーションはハイテクでしたが、仕組みがわかりやすかった。それがアニメーションを作り始めたきっかけですね。
やってみたら「自分でもできる」っていう実感は得られましたが、最初はひどいものでした。《udara udara》は、一年生の夏休みに何もやってなくて、マズイなってことで初めてつくった作品です。つくり方がよく分からず、人の作品を真似しましたが、うまくいかなかった感じです。

昔からアニメーションに興味はありましたか?

まったく興味はなくて、ドラえもんやスタジオジブリの作品など、メジャーな作品しか知りませんでした。大学の授業で、ユーリ・ノルシュテインとかイゴール・コバリョフを見て、「とんでもないな」って思いました。見たことがないようなアニメーションでしたから。最初にイゴール・コバリョフの《Milch》を授業で見た後、youtube で何回も繰り返して見て、意味が分からないのに、すごい衝撃的だったのを今も覚えています。これをつくりたい、これを真似しようっていう気持ちがありましたね。
イゴール・コバリョフの作品は一言で言うと超シュールなんですよ。音楽もほとんどなくて、言葉も一言二言で、ちょっとおしゃれな演出が全部かっこいいです。イゴール・コバリョフはロシアの作家で、「ラグラッツ・ムービー」っていうギャグのアニメシリーズもつくっています。僕はイゴール・コバリョフのような絵は描けないけど、作品の間や動きの気持ちよさとか、音の雰囲気がすごい好きだなと思って。
それから大学時代は、学生CGコンテストで優秀賞を受賞した《雨ふらば風ふかば》の沼田友君と同級生でした。沼田君は当時上映会とかに誘ってくれて、割と彼にアニメーション方面に引きずりこまれた感はありますね。

《ホリデイ》は、どれくらいの期間をかけて制作しましたか?

卒業制作として一年かけました。はじめはアイデアを溜めて、構想を練ることに時間を使い、後半は追い詰められてつくる感じでした。指導教官は港千尋教授と佐々木成明准教授。僕のいた専攻は結構自由で、何をやってもいいって感じのところでした。インスタレーションをやってる人もいれば、写真やドキュメンタリーをやってる人もいて、その中で僕はアニメーションをつくりました。
テーマは、つくっている途中で変わっています。最初は山口百恵の話にしようと思っていました。初めて山口百恵の曲を聴いたとき、「めちゃくちゃいい曲だな」と思いました。ただ彼女は21歳のときに芸能界を引退して、今はまったくテレビに出ていない。僕は当時のことを知らないので彼女は既にこの世にいないと勘違いしていました。そんな「死んでいない人間が死んでいる」状態を作品にしたいと思いました。けれども途中で訳わかんなくなってきて……。
でも、存在を認識できていないものに対する思い入れみたいなものを作品にしたいというのは残っていて、「水分と人間」っていうひとつのテーマをつくりました。

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水分と人間というテーマはどこから生まれたのですか?

自分でも混乱するくらい説明するのが難しいのですが、人が亡くなったとき、肉体は土に戻って、その土から稲が生えてそれを食べて、という繰り返しがある。自分の目の前に存在しない存在をどう想起して、それとの関係性を保ち続けるか。これはクロマニヨン人の頃からの普遍的な感情だと思うので、そのことを描こうと思いました。
僕が《ホリデイ》を制作している夏に、韓国の俳優パク・ヨンハが亡くなったんです。韓流ファンの人たちが、大雨の葬儀の中、大号泣しながら「この雨はヨンハの涙なんですよ」っていってた。「ヨンハが私たちに泣きながら『ありがとう』っていってるんですよ」って。最初はメチャクチャだなと思ったんですけど、やがて自分の中で「これだ!これだよ!」と思い始めました。
彼の肉体を燃やしたら、水分が蒸発して雲になり、やがて雨になる。ファンの人たちがいっていることは間違ってはいないと感じたんです。また、その夏がすごく暑くって、家にクーラーがなくて汗だくで制作していて、この汗は、いろんな人の汗が蒸発して雨となって降ってきたものなんだ。好きな人がいて、その人の流した涙や汗が乾燥して天にのぼり、それが雨になって降ってくる。ちょっとストーカー気味な、すがりつく感じ、そこに救いを求めるっていう物語をつくろうって思った。論理がめちゃくちゃですけど。だから《ホリデイ》は超ロマンティックなラブストーリーなんです。

作品中にはいろいろなテーマの階層がありますね。

構成としては、最初に水に入ったイモリが飲まれて女の子の体内に入ることと、後半で耳からイモリが体内に入るというシーンのように、キーとなるアイテムを全部2回ずつ出しています。コップ、車、猫もそうです。それにプラス、「バンド」というテーマを入れています。熱海みたいな場所を、夏フェスのような会場にして、当時、映画《BECK》が公開中で、バンドやって喧嘩して解散してまた追いかけてみたいな感じを重ねています。ここではコップの演奏により、女の子に歌を歌わせてあげるのが、男による一方的な救いなんです。男は、ひとりよがりの優しさじゃないけど、女の子を救ったつもりで、とにかくあがいています。僕は《ホリデイ》の作品をラブコメっていい続けているんですよ。

《ホリデイ》のほか《河童の腕》の作品中にも、イモリや人間などの腕や耳といった身体の一部が象徴的に現れてきますね。

《河童の腕》は、直接的に肉体をテーマに作品を作りました。元々初期の作品に《蟻人間物語》という作品を作ったのですが、この作品は、僕は小さい頃から蟻がかわいくて好きで、なんで蟻は社会生活を送れているのかなと思っていました。
あるとき、リチャード ・ドーキンスの『利己的な遺伝子』という本に「自分の最も近い遺伝子を守るための利己的な行動の結果が、他人を助ける状態になっている」って書いてあったんです。さらに「肉体は遺伝子の乗り物である」とも。遺伝子が次の世代に渡ってコピーされていくことによって生きながらえていくための乗り物として、肉体が存在している、それは僕の存在が遺伝子の次の世代に繋げていくだけのものなのかもしれないと思いながら《蟻人間物語》を作ったんです。結果としてこの作品はうまくいかなかったですね。僕の中でもっと勉強して作らなきゃなっていうのがあって、その流れでずっと肉体については作品のテーマにしています。自分の中で は《河童の腕》の作品を作った後、《ホリデイ》で削がれていって、可愛らしく、ジョークのような面を持たせながら表現できるようになってきたと思っています。

妖怪なども興味がありますか?

妖怪にも興味がありますが、脳科学、認知科学にも興味があります。基本的に僕が現実的に生きている社会は、意味が分からなくて理解できないものが多くて、不可解なものであふれていて意外と合理的なものって存在しないのかな、合理性っていうのが本当にあるのかなといつも思っています。
脳の認識っていうのはあいまいで、思っている以上に合理的じゃないんですよ。脳が変異を許容している状態であるとすれば、アニメーションの文脈に近いなって思っています。脳を題材にしたアニメーションはいつかつくりたいなと思っています。

《Hietsuki Bushi》はミュージシャンとの共同制作ですが、個人でのアニメーションを作るときとスタンスや意識は変えていますか?

Omodakaさんとは第13回文化庁メディア芸術祭のワークショップ「学生MVコラボレーション」に参加してお会いしたのがきっかけでMVをつくることになりました。ショートバージョンとフルバージョンをつくらせてもらいました。
自分のなかでは個人制作と仕事との意識的な変化はなかったですが、リズムのコントロールができないのが難しかったですね。MVの場合は、先に音があって音のリズムにあわせてストーリーに強弱をつける事を意識してつくらないといけないので、僕自身が音をコントロールすることが完全に奪われている、それは初めての経験でした。だけど曲から想像した話を作っているので自分の中にあるテーマ自体は個人制作と変わらず、自分のテーマの延長でできたかなと思っています。

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ご自身の作品がアートであるという意識はありますか?

自分の勉強がまだ不十分あるため、僕自身の作品がアートであるかどうかは分かりません。アートであり、同時にエンターテインメントでありたいと思っています。観てくれる人楽しませ、心を動す力をもった作品のため常に勉強をしていきたいです。

ひらのさんの目指すアニメーションはどんな姿ですか?

テーマについてお話しましたが、今後そのテーマをどのようにして作品に潜ませていくかが重要だと思います。というのは、僕の考えをひたすら述べている作品は、結局面白くない。僕自身がそれを追及し続けるのは大切だけど、それを気づかれずにいかに潜ませることができるか。最終的には、高橋留美子先生がつくりだすような作品が憧れですね。
見ている人が楽しい気持ちになれる《うる星やつら》のドタバタラブコメアニメーションが好きなので。自分が受けた影響をもっと出しながら、エンターテインメントを含んだ、僕なりのアニメーションづくりを模索しているところです。

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複数のテーマを持ちながらも、実際の作品はどこかで見たような風景にノスタルジックな感覚を思わせる個性的なひらのワールド。見る人それぞれに解釈を委ねながらもいつのまにかその世界に飲み込まれてしまうような魅力がありました。新作OverTheDogsのMUSIC VIDEO《イッツ・ア・スモールワールド》も必見です。

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ひらのりょう
1988年埼玉県春日部市生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。日々生きている時間からあふれた物事をもとに、映像、アニメーション作品を制作している。FOGHORN所属。
twitter:hira_ryo
web:http://ryohirano.com/
http://www.youtube.com/user/YOhaKOKOniIruyo
メール:contact@foghorn.jp

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