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審査員は、どんな作品を期待しているのか?

August 27th, 2013 Published in チャンネルD

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どんなコンテストでも募集要項には「審査基準」は書かれているけれど、実際にそれぞれの審査員が「どんな作品を期待しているのか」は、わかりにくいものです。そこで、7月12日におこなわれた学生CGコンテスト・キックオフミーティングの中で、「どんな作品を期待していますか?」と質問をしてみました。その問いに対する審査員と評価員の皆さんのコメントをまとめてみましたので、学生 CGコンテストに限らず、コンテストに作品を応募してみようか考えている人は読んでみてください。予想通りですか?思いのほか予想外のコメントもあるのではないでしょうか?

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学生CGコンテスト・キックオフミーティングでの
「どんな作品を期待していますか?」の問いに対するコメント集(抜粋)

▼審査員

原田大三郎(映像作家/審査員長)

今年は評価員のグループをアート系とエンターテイメントに分けて、作品をもっと出しやすくなるようにしていますが、その結果が出ると良いと思う。アートとエンターテインメントが両立しないように言う人は多いけれど、個人的には、アート性が高くて、エンターテイメント性も高い作品もあると思っています。そんな作品も期待したいです。

四方幸子(キュレーター)

今、天才は出にくい時代。でも才能を発揮できるチャンスは高くなっている。日本では出る釘が打たれやすくて大変で すが、自由に感じて表現しても良いのです。プロジェクトのように作品の形態をとっていないもの、未分化なものや、実験であったとしてもビジョンとか可能性があるのならば、評価したいと思っています。まだ早いとか無理かなとか、遠慮などせずに応募してくださいね。お待ちしています!

水江未来(アニメーション作家)

この審査会の中での僕の役割はアニメーション作品を発掘することだと思う。世界で戦える作品を評価したいです。僕は「学生作品」という言葉が、学生にしては良くできているという、少しネガティブなニュアンスで受け取られているような気がします。しかし、学生作品というのは10代の終わりから20過ぎの学生の頃にしか表現できないという熱量があるものなので、30代や40代には表現出来ない作品を期待しています。

高須正和(チームラボ/ニコニコ学会β)

見ていてわくわくする、未来が見える作品をいっぱい見たいです。未来が見えるっていうのは、何かの問題を解決していたり、問題そのものがなくなるような、新しいイノベーションがあるということだと思います。また、作っている本人がすごく楽しんでいて、見た人も思わずクスッと笑ってしまうようなものを見ることができたら、僕は幸せです。

豊嶋勇作(プロデューサー/デジタル・フロンティア)

時間なり、人手なりが、ぶっ込まれた、腕力勝負の作品を見てみたい。学生には、そいうことに挑戦して欲しいと思っています。専門学校や大学でグループ作品を作っている人がいると思うのですが、誰かが束ねて、50人で30秒のものを1個作っても良い。プロダクションでいう、工数を尋常なくかけられた作品で、驚かせて欲しいです。

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▼評価員(第1グループ)

土居伸彰(アニメーション研究・評論)

学生CGコンテストでこれまで審査をしていて、日本の学生によるアニメーション作品には、海外の映画祭の評価軸では対応しきれないようなユニークさがあることに気づきました。なので、海外で僕が作品を紹介する際には、学生CGコンテストで知ることになった作品を意図的に入れています。海外の映画祭シーンに地殻変動を起こしたいと思うからです。だから、これまで受けた評価などは気にせず、とにかくたくさん出して欲しいですね。

馬定延(メディアアート研究)

みなさんに期待しているのは多様性です。専攻や分野などの区別によって普段は一緒に並べられることのない多様な作品との新しい関係性の中で、自分の作品の本当のユニークさ、自分の色というのを発見できる、そういう機会としてみなさんに
活用して頂ければと思います。

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▼評価員(第2グループ)

小村一生(プロデューサー/ワンオアエイト)

僕は見た目のクオリティはあまり気にしていません。たとえ格好悪くても、触ったり、見ていると面白くなるインタラクティブな作品がたくさん来てくれると嬉しいです。まだ見ぬエンターテイナーに期待しています。

武田 俊(ディレクター/KAI-YOU)

最近、ポジティブな表現と、より広く届く表現というのが混同されている気がしています。世界を肯定しようが、否定しようが、それが外に向かって広がりのある形で、どうしても作らなくてはいけなかった作者の意図を感じることができれば、ネガティブであるかポジティブということは関係なく、多くの人に見られる力を持ったものになると思っていますので、世に届けられるべくして出てしまったというような作品を見たいです。

谷口充大(ディレクター/テトラ)

プレゼンが出来なくて、話がうまく出来なくても、作品だけで勝負してくるような作品も評価したいです。僕のようなエンターテインメントの仕事をしている人間が評価員に入ったことを重視して、その立場からエンタ向けの作品を選びたいです。エンターテインメントの定義もあいまいですが、そういったところをプッシュしてあげたいと思っています。

萩原俊矢(ウェブデザイナー)

Webを使った作品や、プログラミングを使ったものはもちろん大歓迎です。また、インターネットが多様化してきているので、作品未満の作品、これから作品になる可能性のあるような領域を、ぜひインターネットを使ってうまく発見して、送ってきてもらえると楽しいですね。

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▼当日欠席された2名の評価員(第1グループ)からのメールでのコメント

谷口暁彦(作家)

これまで評価委員として多くの作品を見たり、審査の過程に関わって来て、今僕が期待している作品とは、「大賞を取らない/取りそうにない作品」ですね。審査のプロセス上、大賞を取る作品は、多くの人の評価を集めた作品なわけですが、それって裏返して極端に言えば、多くの人の価値観の平均したとこで選ばれちゃってる作品というか、多くの人に理解できてしまうほど平凡で単純な作品とも言えるわけです。本当に前衛というか未来を先取りしたようなマニアックな作品は今はまだ多くの人には理解されない作品なはずです。だからそれらは「大賞を取らない/取りそうにない作品」になるわけですね。僕はそういう作品のほうに価値があると思うし、そういった作品は審査後も記憶に残っています。こう考えると、大賞を取る作品が一番「ダサい」感じもしてきますね。なのでみなさん大賞なんか狙わずに(狙って取れるもんでもないですが)、自分の得意な狭いとこビシビシついてくる作品送ってきてください。

渡邉朋也(作家)

評価員としての作業を始めるまでは、毎年送られてくる数百もの応募作品の記録映像に目を通すという苛烈な現実を前に軽く鬱屈した日々を過ごしていたのですが、やってみたら全然シンドくなかったです。杞憂でした。なので、とくに「どういう作品」というのは無いです。作品としての自律(自立)性が危ういくらいのものでもガシガシ応募してください。たとえば、日常生活でよく分からない単語に出くわした時、よくブラウザの右上にある検索窓にその単語を打ち込み、検索したりしませんか?学生CGコンテストは、そういう感覚で応募すべきコンペティションです。Googleほど反応は良くないかもしれないけれど、それでも結構な割合で、あなたの作品のためだけのねっちりとしたコメントを返します。さあ、いますぐブラウザを起動しましょう。

※ ミーティングでのご発言を元に、コンパクトに掲載するために事務局で編集を加えています。
※ コメントをいただいたミーティングの映像アーカイブはこちらです。
※ 審査員・評価員のプロフィールはこちらです。

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次回の学生 CGコンテストの番組配信
8月28日と29日に行うミーティングでは、歴代の受賞者もゲストに交えて番組を配信します。
http://www.ustream.tv/channel/dep-art-ure

◎受賞者から見た学生CGコンテスト!評価員はこんな作品も待っている!
【8月28日(水)17:00~18:30】

◎アート以外も OK! アプリ、ゲーム、ガジェット等、こんな作品も待っている!
【8月29日(木)17:00~18:30】

第19回学生CGコンテスト9月17日まで作品募集中。
http://www.cgarts.or.jp/scg/




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