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Art & Gaming – レジデンスアーティスト Hanakam & Schuller

June 6th, 2014 Published in こんな作品つくりました

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オーストリア政府のアーティスト・イン・レジデンスプログラム[*]で4月まで日本に滞在している2人のアーティストRoswitha Schuller(ロスウィータ・シュラー)とMarkus Hanakam(マーカス・ハナカム)。ゲームの遊戯性を軸にコラボレーションを続けている2人の活動や作品を紹介しよう。

ふたりのバックグランドを教えてください。

私たちはウィーン応用美術大学に入学した年に知り合い、そこで美術教育・デザイン教育を学び、その後、建築とニューメディアを学びました。マーカスはウィーンで学ぶ以前にドイツのエッセン大学でアートとデザインを学んでいました。だから、私たちは様々な領域にまたがるアカデミックなバックグラウンドを持っていて、それは応用美術、デザイン、現代美術にまで及んでいます。入学した最初の年に2人でコラボレーションを始めながら、規模の大きなプロジェクトチームのメンバーとしても活動していました。

コラボレーションするようになったきっかけは何ですか?

中々難しい質問ですね。というのも、私たちが進もうとした道は決してまっすぐだったとは言えなかったからです。マーカスはインフォメーション・デザイン研究にアプライしながら、エッセン大学でも別のプログラムに選抜されていて、しかもすでに広告代理店でインターンとして働いていました。私(ロスウィータ)はより理論的な領域で活動するために研究を始めて、芸術社会学の博士論文の執筆にとりかかっていました。その後、ウィーンの大学でコラボレーションしたとき、お互いフリーのアーティストとしてコラボレーションし続けることが私たちの進むべき道だとはっきりと分かったのです。

これまで制作してきた作品や制作方法について教えてください。

私たちはチームとして活動しているので、作品の制作にあたって共通認識にもとづいた方法論を打ち立てる必要がありました。あるいは制作する際には構築すべき対話のルールが必要でした。マーカスと私はずっとゲームに熱中してきたんですね。ペンや紙などを使うような古典的なゲームや、初期のコンピュータ・ゲームが持っている構造に興味があって、私たちの制作プロセスはそうした構造に大きな影響を受けています。初期のコラボレーション作品はとてもシンプルなフラッシュのアプリケーションやゲームでした。例えば『Perfect Lovers』(2006)などのアプリケーションのように、プレイステーションのコンソールを使用したものがあります。あるいは、『Palaces & Courts』などは、インターネットにアクセスして体験する作品です。

Perfekte Liebhaber (Perfect Lovers)

Perfekte Liebhaber (Perfect Lovers), Screenshot, 2006

Palaces & Courts small 2

Palaces & Courts
Installation View, MAK Museum of Applied Arts / Contemporary Art, Vienna /Austria, 2010                                      LINK: www.palacesandcourts.com

私たちは、ゲーム(や対戦)を見る側の経験と、ゲームをする側の経験をリンクさせることを考えています。また、ゲームをするということは、独自の言語やルールや基準を備えた今日の様々な文化活動を適切に表すメタファーであると思っています。でも、これまで様々な作品の制作を通じて、インタラクティブな作品を展示環境に組み入れることがそれほど容易ではないことが分かりました。こうした理由で、私たちは徐々にアプリケーションの制作から、ビデオ作品やショートフィルムの制作へとシフトしていきました。それでも遊び心に溢れた構造への意識は引き続き取り込んでいますし、今でもそれを編集やミザンセーヌ自体に取り入れています。また、大学時代にすでに始めていた収集品のアーカイブを利用しています。このアーカイブは、建築部品やツールキットなど、様々なプラスチックのオブジェで構成されていて、それらをスキャンしたり、動きのある物体に変えたりして、映像作品で使用しています。それらは三部作『INVASION』、『BLOOM』 、『TOUR』 (2010-12)や、『KOKOMO』 (2009-12)だけではなく初期の『Perfect Lovers』などでも登場しています。


『INVASION』, Preview, 2010

Bloom

BLOOM
Production Shot, Petömihalyfa (Hungary), 2011

Tour

TOUR
Production Shot, Lac du Salagou (Southern France), 2012

Hanakam_Schuller_KOKOMO No 7 small

KOKOMO No.7
4C Print on Kodak Endura, 70x70cm, 2009

Speicher No5

SPEICHER (Memory)
4C Print on Kodak Endura, 70x100cm, 2012

創作活動の中で最も重要なポイントは何ですか。

私たちは、自分の作品に対して自信に満ち溢れているようなアーティストにはなりたくないと思っています。私たちにとって、アート作品を制作することは、そのプロセス自体やアートが持つであろう様々な価値観(公共の利益、理想的な善など)に疑問を投げかける行為なのです。自分たちの作品はアンビバレントなもので、『TOPPINGS』シリーズに見られるように、それはある機能を持つ家具であったり、何の役割も持たないオブジェであったりします。あるいは素材によって映像になったり、観念的な彫刻であったりします。私たちは、自分たちが考える遊戯性を、鑑賞者やユーザーに投げかけようと試みているのです。

zucker_000701 Kopie

Les Tartes
Series of 12 furniture / objects, 2012


Nouvelle Vague (Macarons), Video, 2009

日本でのレジデンスプログラムに申請した理由を教えてください。

2011年にトーキョーワンダーサイト本郷で展示を行うために東京に来たことがあり、作品制作を大いに楽しみました。しかしそれとは別に、様々な日用品からその機能を取り除いてみると、どのようなことが見えてくるのかということにとても興味がありました。それは一体何なのかと。1つのオブジェが何かもっと主体性をもったものに成り代わったりするのかと。そこにどのような儀式やジェスチャーがもたらされうるだろう。あるいはモノ自体へのフェティシズムがどのように発生するのだろうか。私たちの作品で提示しようとしてきたこうした疑問は、日本の伝統的なライフスタイルや哲学の中で頻繁に問われて来たものです。そこで、私たちは茶会に参加したり、あるいは山本常朝の「葉隠」などの文学作品に当たったり、様々なレベルでリサーチを試みています。

次の制作に向けて東京での滞在中に何かインスピレーションを得ましたか?

それはもう実に多くのインスピレーションを受けました。秋葉原へ行ったり、荒川のレジデンスの近所にあるドラッグストアやホームセンターへ行って、オブジェをたくさん買い集めてアーカイブにしています。また、日本の現代美術のみならず、近代以前の美術作品や工芸品などを見て回りました。特に日本の「床の間」というニッチ構造とそのあり方に興味があります。軸が掛けられている床の間の空間自体を「絵画」としてみることは、私たちにとって特別な経験でした。

今後の活動について聞かせてください。

この滞在中に、都内各所[*]や日本各地で新たなショートフィルムの撮影を行ないました。帰国してから編集して作品として発表します。また、日本を出発した後は、スリランカのアーティスト・イン・レジデンスに1ヶ月ほど滞在して作品を制作する予定です。[*撮影協力:東京家政大学家政学部造形表現学科 兼古昭彦研究室・映像メディア実習室]

Hanakam&Schuller Portrait 300 dpi

Roswitha Schuller(左)とMarkus Hanakam(右)

Markus Hanakam(マーカス・ハナカム)
1979年ドイツ・エッセン生まれ。2000年〜02年にエッセン大学でアート&デザインを2年間学んだ後ウィーンに移り、2006年にウィーン応用美術大学で美術教育の修士号を取得。2009年に彫刻およびマルチメディアの修士号を取得。

Roswitha Schuller(ロスウィータ・シュラー)
1984年オーストリア・フライザッハ生まれ。2002年〜07年までウィーン応用美術大学で学び美術教育の修士号を取得。2009年に彫刻およびマルチメディアの修士号を取得。2008年〜12年まで同大学の博士課程で学び芸術社会学の博士号を取得。博士論文のタイトルは“Happy Ending Nature. The role of the Arcadian in sociocultural space“.

2004年からアーティスト・デュオ「Hanakam & Schuller」としてコラボレーションを行なう。その作品は、ビデオダンボ・フェスティバル 2013(ニューヨーク)、Recontres Internationales 2012(パリ)、ISEA 2011(イスタンブール)、4th Moscow International Biennale for Contemporary Art 2011(モスクワ)などを含む国際フェスティバルや美術館で展示される。映像、グラフィックデザイン、詩などの大衆文化的な側面にフォーカスし、それらをユニークなデザインやストーリーへと昇華させる作品作りを行なっている。彼らは主としてビデオ、インタラクティブなアプリケーションやドローイングという手法を用いて制作している。MAK Schindler Fellowship(ロサンゼルス)やCitè International des Art(パリ)など、様々なレジデンシーやフェローシップを取得。短編映像作品『INVASION』は第15回文化庁メディア芸術祭アート部門の審査委員会推薦作品に選出された。

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[*]オーストリア政府による アーティスト・イン・レジデンスプログラムについて(東京都荒川区)

オーストリア政府文化省は、オーストリアの若手アーティストが滞在できるよう、長年にわたり荒川区に小さな邸宅を借り受けている。 本国で審査され推薦を受けた若手アーティストは滞在のための奨学金も助成される。このプログラムの基本的な方針は、有望なアーティストが見聞を広め、異文化の背景を学び、作品を制作する機会を提供すること。日本のアーティストやアート関連の機関・施設と交流を図り、日本のプロジェクトに積極的に関わることを奨励している。これまで非常に多くのアーティストが参加し、コラボレーション・プロジェクトを多数生み出しており、広い意味で日本とオーストリアの文化交流や対話を促進している。荒川区はオーストリアとの長期的な友好関係から在日オーストリア大使館に協力し、来日するアーティストを好意的にサポートしている。

取材協力:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム