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札幌国際芸術祭2014 – vol.5 島袋道浩作品その2〜北海道立近代美術館

July 23rd, 2014 Published in 世界のフェスティバル

島袋道浩『携帯電話を石器と交換する』の体験参加

vol.4で紹介した札幌市資料館からさらに3ブロックほど北西に進むと、緑に囲まれた知事公邸のブロックがあり、その隣に北海道立近代美術館がある。知事公邸と美術館がある交差点の一角に、島袋道浩によるもう1つの作品『携帯電話を石器と交換する』を体験するためのテントが設置されている。この作品は、人類にとって最新の道具といえる携帯電話を、人類最古の道具のひとつである石器に持ち替え、市内に残る古代人の暮らしていた場所を訪れる体験型のプロジェクトだ。実際に江別市で採掘された古代の石器がグリッド状の箱に収められており、その中から自分の手にフィットする石器を選んで携帯電話と交換する。最新の道具と最古の道具は、時代こそ大きく異なるが生活のための必需品であることに変わりはない。携帯電話を石器と交換してもすぐに戻って来てしまう人もいるという。われわれが携帯電話にいかに依存した生活を営んでいるかを痛感する。

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近代美術館から横断歩道をわたった角にあるテント。こちらで島袋道浩の作品『携帯電話を石器と交換する』の体験申込をすることができる。写真は石器が入った台と、本作品を担当するプロジェクトアシスタントの大友恵理さん(写真中央)とボランティアスタッフの皆さん。

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自分の手にフィットする石器を選んで、携帯電話と交換することができる。

北海道立近代美術館でのエキジビション:企画展示「都市と自然」

今回の芸術祭のエキジビションとして開催されている企画展示「都市と自然」。国内外の現代アーティストの作品によって、北海道と日本の近代化の歩みと自然環境を振り返りながら、これからの札幌と北海道の自然、都市のあり方、エネルギー、暮らしを見つめ直している。その会場となっているのが、北海道立近代美術館と札幌芸術の森美術館だ。二つの美術館では、それぞれの特徴と立地条件を活かした展示が行われている。

近代美術館の1Fでは、「都市化・近代化」に焦点をあて、北海道の炭鉱史から原子力まで、エネルギーの転換期と、それを取り巻く環境や社会背景に関連した作品が並び、私たちの今の暮らしを支える近代化の過程を再考するきっかけを与えてくれる。

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岡部昌生『YUBARI MATRIX 1998-2014』
大規模な夕張炭鉱遺構のフロッタージュ作品。床に敷き詰めたドローイングの全面を強化ガラスで覆い、その上を来場者が歩いて鑑賞することができる。鑑賞者は作品の上を歩くことによって岡部の制作を追体験すると同時に、炭鉱の遺構を身体的に経験することで、私たちの現代の暮らしを支える近代以降のエネルギーの変遷と都市化の歴史に思いを馳せることとなる。

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アンゼルム・キーファー『メランコリア』福岡市美術館蔵
この作品の他に『ジークフリートのブリュンヒルデへの困難な道』も展示している。

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スボード・グプタ『ライン・オブ・コントロール』Courtesy of the Artist and Arario Gallery
インドで真鍮や銅などに代わって用いられるようになった安価なステンレス製の食器を使って、巨大なきのこ雲を形作っている作品

美術館2Fは、札幌の自然環境を表象する「雪」をテーマに、アートとサイエンスの角度から都市と自然を見つめ直すセクションだ。畠山直哉の写真、カールステン・ニコライ、高谷史郎の雪にちなんだ作品の展示と共に、中谷宇吉郎博士の雪の結晶の写真のアーティスティックな評価を試みている。

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高谷史郎『Ice Core』2005
 作家蔵
「雪と氷との対話」展(ラトビア国立自然史博物館、2005)委嘱作品
作品制作協力:北海道大学低温科学研究所、国立極地研究所、本堂武夫、宮本淳、若濱五郎、中谷芙二子
科学者・中谷宇吉郎へのオマージュとして制作した映像インスタレーション。この作品のほかに、中谷の研究資料である雪の結晶、火花放電の写真の展示監修も手がけている。

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展覧会の最後には、空間構成アドバイザーを務める青木淳と丸田絢子による雪の結晶をイメージした部屋がある。中では中谷宇吉郎の著書を読むことができる。

エキシビション:企画展示「都市と自然」

会 場 :北海道立近代美術館
日 程 :2014年7月19日(土)-9月28日(日)
時 間 :9:30-17:00(最終入場 16:30)
金曜日(8/29、9/5は除く) 9:30-19:30(最終入場 19:00)
休館日 :毎週月曜日 (月曜日が祝日又は振替休日のときは開館、翌火曜日休館。)
担 当 :飯田 志保子(アソシエイト・キュレーター)
参加アーティスト:
アンゼルム・キーファー
カールステン・ニコライ
スボード・グプタ
中谷 宇吉郎
岡部 昌生
工藤 哲巳
畠山 直哉
高谷 史郎

次は、企画展示「都市と自然」のもう1つの会場となっている札幌芸術の森美術館での展示を紹介しよう。

札幌国際芸術祭2014 紹介レポート一覧
vol.1 本日より開幕!開催テーマは「都市と自然」
vol.2 札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ) 
vol.3 北三条広場〜北海道庁赤れんが庁舎
vol.4 札幌市資料館
vol.5 島袋道浩作品その2〜北海道立近代美術館
vol.6 札幌芸術の森美術館
vol.7 清華亭(毛利悠子『サーカスの地中』)
vol.8 モエレ沼公園
vol.9 札幌大通地下ギャラリー500m美術館
vol.10 イベント紹介

 




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