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[work] “on the ground” -invisible inaudible

November 8th, 2012 Published in こんな作品つくりました

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福岡にFUCAが誕生したのは今年2月。福岡から世界に向けてアーティストやクリエイターを発信していくことを目的に立ち上げられた。施設概要をみると、今後の活動が楽しみになってくる。インターネット上の会員制コミュニティー、IDPWのラボもこのスペース内に開設されていることでも注目される。このラボを展示会場に、11月16日より紹介されるのが、《“on the ground” -invisible inaudible》 というインスタレーションだ。開催は11月16日から5日間と短いが、連日21時まで鑑賞可能だ。

会場には、 LEDが内蔵された1.6m〜 2m の高さのアクリルポール6本がランダムに自立し、鑑賞者はこの空間を歩くと、そのサウンドが有機的に変化するという。写真で見る限り、スタイリッシュなインスタレーションという印象を受けるが、制作のきっかけとなったのは311であったという。作家の高橋英明さんは、昨今、サウンドアーティストとしてメディアアート作品に積極的に参加し、活動の幅を広げている。新作《“on the ground” -invisible inaudible》について聞いてみた。

on the ground -invisible inaudible (Photo: 穴井佑樹)

今回の作品には3名 –高橋英明 、Uwe Haas、穴井佑樹(team-lab)– のアーティストが参加されているということですが、どのように作品を作り上げていったのか、そしてどれくらいの制作期間が必要だったのかを教えてください。

昨年の3.11のあと、自分も含めた社会の状況を考えたとき、ある種の危機感を覚え、それらを何らかの形で作品として表現したいと思い、コンセプトを考え始めました。そして、この作品を具現化するにあたっては、日本からの視点だけではなく、海外からみて3.11の問題がどううつるのかということも取り入れたいと思いました。そこで、長年の友人で、作品でコラボレーションをしたこともあるドイツの音楽家Uwe Haasと、直接会ったり、ある時はSkypeを通じて、たびたび話をする機会を持ちました。3.11、とくに原発問題の一番の問題点は、原因、問題の対象が見えない、聞こえないものであり、誰もが知覚できず、そして、未だ正確な事がわからないという事です。そして、このように見えない、聞こえないものに対しては、人々の関心があっという間に薄れていってしまう事だと思いました。そういう、見えない、聞こえないものを視覚化、聴覚化することで、その存在を日常的に意識するきっかけになればと思い作品の形態を模索し始めました。基本的なアクリルポールの構造や部屋の中での起きる事象に対してはほぼ、こういった話の中で固まって行きました。

サウンド制作にはUwe Haasに参加してもらっています。例えば「危機的音響」、「希望的音響」というキーワードで音作りをした場合、人によってその言葉の捉え方が異なるため、完成するサウンドは大きく違ってきます。そういった表現の振り幅を出すためUwe Haasに参加してもらいました。センサーのプログラミングに関しては、自分一人ではカバーしきれない部分があったので、これまでもインタラクティブな作品で何回か共同作業をしてきていたチームラボの穴井くんに協力を仰ぎました。実際にアイディアをたて始めてから最終的な形にたどり着くまでに約10ヶ月くらいを要しました。

作品内の光と音の形状、質はどのように決定されたのでしょうか。そして作品内でこの2つの要素はどのように共鳴しているのですか?

アクリルポールの形状に関しては、いくつかのメタファーにもなっていて、それぞれのアクリルポールは原子炉のメタファーでもあり、またそこから放たれる、ゆっくりとした光の明滅は生命体の呼吸をイメージしたところから決定していきました。また、サウンドに関しては、潜在的に今、現在、人が直面している不安や恐れのようなものをベースに、ある種の危機感を伴う音が、センサリングによって発生するように出来ていて、またあるきっかけで、希望を見いだすような音響に変化していく仕掛けになっています。これら、光とサウンドは常に、観客とアクリルポールとの距離感によって変化していきます。また、会場内には6本の見えない線が張り巡らされていて、それに触れることによって、サウンドが変化するようになっています。

これまでの作品と今回のインスタレーション作品で共通する点、または異なる点があれば教えてください。

過去の作品で言うと2006年に作ったメディアオペラ<h>our<br/>link (アワーブリンク)もある種その時の社会状況から生み出された作品で、形態は違いますが、どちらも、ある一定時間、観客を取り巻く状況(環境)を作り出して、その中で何かを感じ取ってもらう仕掛けを作るという点では共通しているように思います。

一回の鑑賞時間はどれくらいを想定されていますか?

これは会場やお客さんの人数によっても変わってくるので、一概には言えないのですが、だいたい10~15分くらいで一通りの事象が起きるにプログラミングされています。でも基本的にはお客さんにはいたいだけいてもらえればと思います。(笑)

今回の作品で「『見えないもの、聞こえないもの』を視覚化、聴覚化し、直感的に体感してもらう(webサイトより)」ことによって鑑賞者にはどのような変化が起こると思われますか。

これは鑑賞者によって違うのでかなり差があるので何とも言えないのですが、これをきっかけに日常的に存在する「見えないもの、聞こえないもの」への意識が続く事を願っています。

今回の鑑賞体験と高橋さんの実体験の中で類似している風景や瞬間があれば教えてください。

夕暮れ時に(今ではあまり東京では見られなくなってしまっていますが)コウモリが飛んでいると、今のような現在の社会の中では(原発問題だけでなく、)無数の電波などに囲まれていることを思います。コウモリは、人間が感知できないヘルツ数の音波を口から発して、その跳ね返りをキャッチして距離を計っているらしいです。この計測方法を反響定位というのですが、これができるのは小型のコウモリらしいです。彼らには、こういった電波的なものがどう聞こえて、どういう影響を及ぼしているんだろうというのはよく考えていたりしたんです。

無意識的にはそういう事も今回の作品の原風景としてはあるのかもしれません。

今後のどのようなプロジェクトを予定されていますか。活動予定でもかまいません。教えてください。

この《on the ground》は日本国内だけの問題ではなくて、世界の他の国でも共有していけるテーマだと思っているので、いま海外での展示も検討されていて、近く、ベルリン、スロベニア、台湾などでも展示が実現するかもしれません。

また、今進めているプロジェクトとしては、同じく3.11がきっかけとなり作リ始めている、絵本と音楽が一体となっている作品があるのですが、こちらは違う視点から同じテーマを取り上げていてます。また、紙というとてもアナログなメディアを使いつつ、なおかつインタラクティブなことも含ませた作品にしようと思っていて、かなり仕上がるまでのまだいくつものハードルがあるのですが、それを年明けくらいまでには目処をつけたいと思っています。

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“on the ground” -invisible inaudible
[会期]2012年11月16日(金)~11月20日(火)
[場所]810-0014 福岡県福岡市中央区平尾3-17-13 1F/ 2F FUCA/IDPW
[時間]12時 00分~21時00分
[入場料]無料
[公式サイト]http://fuca.asia/portfolio-view/on-the-ground/

発案、コンセプト:高橋英明
サウンド制作:高橋英明 & Uwe Haas
オブジェ制作:高橋英明、穴井佑樹(team-lab)
センサープログラミング:穴井佑樹(team-lab)

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高橋英明 / Hideaki Takahashi 音楽家・メディアアーティスト

Photo: GOTO AKI

東京芸術大学音楽学部作曲科卒、同大学院修了。在学中に名古屋市文化振興賞を受賞。これまでに本名名義のほか mjuc、deepframe、natureblunt 名義での CD、DVD のリリース、ライブを多数おこなう。2006年には6面のスクリーンと8本のサラウンドスピーカー及び16本のスーパーツ イーターを用いた メディアオペラ「our link (アワーブリンク)」を公演。 またウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」との共作も多く、今年3月には「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」書:紫舟 インスタレーション:チームラボ、音楽:高橋英明)でフランスのLaval Virtual 2012にて建築、芸術、文化賞を受賞している。