DEPARTURE



[Works] a lower world 平川紀道

November 5th, 2011 Published in こんな作品つくりました

今回の「こんな作品つくりました」では、平川紀道さんの新作《a lower world》について、作品制作のきっかけやコンセプトなどについてお聞きしました。また、この新作による展覧会「lower worlds」がlimArtで開催され、展覧会にあわせて発売されるアートブック「a lower world」を用いたインスタレーションも発表されますので、これらの情報もご紹介します。

《a lower world》

《a lower world》

これまでは、おもにデバイスを用いた映像プロジェクション/音響による大型インスタレーション作品を制作なさっていますが、今回の新作《a lower world》は平面作品です。制作のきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけと言えば、昨年、白壁に円形ラベルとラインテープで、プログラムで生成した座標データを人力で定着する作品を制作したことがありました。そのグループ展では、明るい部屋で展示できるものを要求されてその作品を作ったので、それも動機があったというよりは、部屋に合わせたようなところがあります。あと、その際に、作品を見てくれたデザイナーの田中義久さんと気が合って、彼は超がつく紙好きなので、それもきっかけだったと思います。もちろん自分自身がプロジェクションで出る表情に少し飽きていたということもあるかと思います。

今回の作品のコンセプト、作品タイトルと表現内容との関係などについて教えてください。

今回の作品は、基本的に素材とデータと出力方法の組み合わせなので、どういったデータを、どういう方法で、どんな素材に出力するのがよいのかを模索、検証する、というのがコンセプトと言えばコンセプトで、それについては田中さんに助けてもらいました。彼の言葉を借りると、「彫師と刷師」みたいなところがありました。あとは今までのリアルタイムでプログラムが走る作品が持つ時間性を、別のかたち、別の素材上でどう表現できるか、といったことも考えました。結果、「写真に撮って、それを見せながら説明する」といったことができない/したくないような作品群になりました。

作品形態として、大型インスタレーションではなく、あえて平面にこだわった理由は何でしょうか。

展示会場が、limArtというブック・ストアに併設されたギャラリースペースということが決まっていました。本屋さんと言っても、海外の古書/良書だけを集めたような本屋さんで、そういったものが集まってると、やはり、ちょっと独特の雰囲気があって、そこで、暗い部屋を作ってデータプロジェクタで映像を流すとしたら、ちょっとシラケるだろうな、というのがあったのと、田中さんが今回の本の作品やらDMやらを、高いクオリティで出して来てプレッシャーだったんですが、そうなってくると、こっちも紙でやりますよ、っていう、「売り言葉に買い言葉」みたいな感じはありました。

平川さんは、三上晴子さんの作品をはじめ、他のアーティストとのコラボレーションや作品制作に様々な形で関わられていますが、チームでの制作と個人での制作の明確な違いや、ご自身のスタンスとして意識的に差異化している点などがあれば教えてください。

サポートをしているときは、アーティストではなくデザイナーですので、作品に関する決定権はありませんが、自分が作家だったらどうするか?ということは常に考えてるところがあると思います。

展覧会と同時に発売されるアートブック「a lower world」について教えてください。

展覧会より先にこの本の構想がありました。

田中さんと出会って、しばらくして、Mirrorの鈴木さんを交えて居酒屋で話してたときに、パッと構想が出てしまって、そのまま進んできました。正確には、当初の構想とはちょっと違うものなのですが、基本的には全冊が違う初期値に基づいて計算されて製本までされるという、言ってしまえば、どの本をとってもユニーク作品となるようなものです。

購入者が本を購入した時間(1970,1,1, 00:00:00 からの経過秒数)を初期値として、プログラムが走り、ページを生成していきます。プログラム自体は、爆発に似ていますが、 この宇宙ではありえない物理計算をしています。

 今後の活動について教えてください。

作品の構想はいくつかあるので、これまで通り、時期をみて実現させていければと思います。
もちろん平面作品に関しても続けていきます。
_____________________________________________

展覧会 平川 紀道「lower worlds」
会期:11月8日(火)〜11月20日(日) ※月曜日休廊
時間:12:00〜20:00
会場:limArt(〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3-1F)
会場HP:www.limart.net
企画・運営:Mirror
協賛:クリアビューアート株式会社 株式会社インテグラ技術研究所
   日本プレート精工株式会社 株式会社タグチクラフテック
特設サイト:www.lowerworlds.com

アートブック 平川 紀道「a lower world」
size:396×297mm
page:512p + ケース付
部数:全てがユニーク作品となります
アートディレクション& デザイン:田中義久
発売:11月8日(火)
価格:未定
特設サイトにて完全受注生産。limArt(恵比寿)他、全国のセレクトショップにて本の展示と購入も可能。

平川 紀道(ひらかわ のりみち)

1982年生まれ。コンピュータ・プログラミングによるリアルタイム処理を用いた映像音響インスタレーションを中心とした作品群を国内外の美術展、メディア・アート・フェスティバルで発表。2004年度文化庁メディア芸術祭優秀賞、第10回[2004]学生CGコンテスト最優秀賞、アルス・エレクトロニカ2008準グランプリ他受賞多数。池田亮司のコンサート・ピース制作への参加、大友良英+木村友紀+Benedict Drewとのコラボレーション、ミラノ・サローネでのレクサスのアートエキシビションへの参加、Typingmonkeysとしてのライブ・パフォーマンスなど、活動は多岐にわたる。
http://counteraktiv.com

 

「こんな作品つくりました」では、ひきつづき様々なジャンル作品やプロジェクトを、色々な角度からお伝えしたいと思います。

「こんな作品つくりました」の記事一覧はこちら




アーカイブ