[インタビュー] hahacolab(ハハコラボ)
August 23rd, 2011 Published in インタビュー
8月の暑い日差しの中、伺った先は千代田区にある3331 Arts Chiyoda。正面入口を入って左手にあるコミュニティスペースでhahacolabの江口よしこさんと山口レイコさんが迎えてくれました。hahacolabは3331 Arts Chiyoda内の「かえるステーション」を拠点に、親子を対象にしたワークショップや創作活動を展開しているグループで、メンバーは3人。もう一人のメンバーである石崎奈緒子さんには、インタビュー当日にお会いすることができませんでしたが、江口さんと山口さんから、hahacolabのこと、お母さんのこと、子供のこと、いろいろなお話をお伺いしました。
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結成のきっかけは何だったのでしょうか?
江口:3331の コミッションワークアーティストである藤浩志さんが提案する子供の遊び場「かえっこ」が常時出来る拠点として作られた「かえるステーション」に併設された工房で、藤さんご自身から「何かやってみない?」と誘われたのがきっかけです。私は1999年から約2年間にわたって藤さんのアシスタントをやっていました。その経緯で声をかけていただいたのだと思います。
3331の「かえるステーション」には毎日のように親子連れがたくさん訪れています。ここに、子供達だけじゃなくお母さんも一緒に楽しめる仕掛けがあるといいなと感じていて「お母さんと子供が一緒に楽しめる制作工房」を作りたいと考えました。
そこで、イラストレーター/アニメーターとして活動されている山口レイコさん、web制作会社でディレクターとして活躍していた石崎奈緒子さんに声をかけました。もともと3人は家族ぐるみで仲が良かったのですが、子供達を対象にしたワークショップを考えるのが好きな私と、ワークショップの実践経験が豊富な山口さん、プロジェクトマネジメントができる石崎さんとだと、チームとしてバランスがとれると考えたからです。
hahacolabのコンセプトについて
山口:ネーミングに関しては、お母さんと子供のためのオープンな制作工房を作りたいという想いから、母と子のラボラトリーで、hahacolab(ハハコラボ)にしました。
hahacolabの活動の最大のコンセプトとして、子供の成長の一瞬を切り取って残したい、というのがあります。石崎さんが言っていたのですが、親になると突然携帯の待ち受けを子供の写真にしてみたり、年賀状を家族の写真にしてみたり、今までは全くしようと思わなかったことをしてしまうんですよね。それがとても面白いなあと思って。子供って毎日変化していて、本当にあっという間に成長してしまいます。
私たち母親としては、その一瞬一瞬をずっと覚えていたいんです。
hahacolabは子供の写真や映像だけでなく、子供の描く絵や文字、感覚なども含めて大切な記録と考えています。それをうまい具合に残せたらと考えました。
例えば、子供の落書きや工作などはとてもかわいくてどれも残しておきたいのですが、大きさもまちまちだったり、飾っておいても汚くなっていく。作ったものによっては保存に困ったりします。できれば全て残したいのですが、実際にはそれがなかなか難しい。
ではどうやったらきちんと残せるか。
例えば、使えるものに落とし込むとか、少し完成度を高めたものにするとか。
ちょっとだけ大人が手を加えるだけでずっと持っていたいような物に生まれ変わることができると思います。hahacolabは、ワークショップ、グッズ制作を通して、子供のかわいい瞬間をきちんと残せるお手伝いができたらと考えています。
どのようなワークショップをされているのですか?
江口:8月21日にかえっこバザールで行った「じぶんちエコバックをつくろう!」は、自分が覚えているはずの家のまわりの地図を描くというシンプルなものですが、同じ場所に住んでいても人によって見ているものが違ったり、目印が違ったり、距離感も違います。その違いを楽しむワークショップです。
母親になって感じたことですが、ある時まで子供は自分から出て来た分身だと無意識に思っていて。だけどそうではないと気づいた時に愕然としたんです。
でもそれは当たり前のことで。 その時、自分と子どもの個性の違いに楽しみながら気づけるワークショップをやりたいと思いました。 今後も大人と子供、女の子と男の子、友達と自分。それぞれの感覚や価値観の違いを再認識して、みんなで楽しめるワークショップを行っていきたいと思っています。
山口:全体としては、それぞれの子供の個性やいいところが、お父さん、お母さんに発見してもらえるようなワークショップの開催を心がけたいです。私もうちの子どもが周りと違うと不安に感じてしまうんですが、子どもの個性の違いを楽しめるようになれば、気が楽になり、安心に繋がるように思うので。
グッズについてお聞かせください。
江口:「マイゴフダ」は山口さんが「子供が迷子になったときのためのネームタグを作りたい」という提案と、ちょうど震災の後で、3331のスタッフの方から大震災の復興支援イベントで何かやりませんか?と声をかけていただいたのがきっかけで形になりました。
山口:うちの子はすぐ迷子になるので。まだ名前も言えないような小さい子供と離ればなれになった時、ほんの少しでも安心できるものを作りたいという想いで提案しました。
江口:実は、うちの子供達は迷子になったことがないので山口さんの発想は出てきませんでした。私はまずそのネームタグの話を聞いたとき、まっさきに思い浮かんだのは江戸時代の「迷子札」でした。でもそれは現代にもつながるな、と。江戸時代のお母さん達も、子供が迷子になった場合、無事に家に帰ってくることを願って、また名前や住所を見た人が送り届けてくれるというコミュニティへの信頼のもとに作っていたのだと思います。昔も今も母親の想いは一緒だと思って、名前とコンセプトが決まりました。
江口:「こどもじとけい」は小さな子供の書くヘンテコな文字を成長の記録としてちょっと変わった切り口で残す作品です。 子供に円だけ用意して時計を描いてと言ったら、1から50くらいまで書いて埋め尽くしたりして、子供にとって時計は円の中に数字がたくさんあるものなんでしょうね。「こどもじとけい」も「じぶんちエコバッグ」と同様に、「じぶんシリーズ」でワークショップに展開できたら面白いなと考えています。
アイデアはどのように生まれるのですか?
江口:アイデアはみんなで出し合います。面白そうならやってみる。面白そうでなくても、とりあえずやってみる。今はまだその段階です。hahacolabには 1歳から8歳まで5人の子供達がいて、それぞれ成長するたび新しいアイデアが自然に生まれるだろうと思っています。 また、私たち3人は特に役割分担を決めているわけではありません。全員が一緒に一つのことをやるのもよいけれど、今後はメンバーそれぞれが特化している部分が異なるので、個人の活動をするという要素が含まれていっても面白いかなと思っています。
今後はどのような活動をされるのでしょうか?
江口:プロジェクトごとに外部からの招待などもできたらと思っています。趣味として活動するのではなく、目標は仕事につなげていくということ。3331で「かえっこ」と一緒にワークショップをやらせてもらって、幸いにも色々な方から声をかけていただくことが増えてきたので、丁寧に先につなげていきたいと思います。
具体的な動きはありますか?
山口:今のところ「かえるステーション」と連携したワークショップの開催と、グッズ制作を進めています。また地方の団体からもワークショップの開催のお誘いをいくつかいただいています。子供がいるので制約もありますが、うまくバランスをとって積極的にやっていけたらと思っています。
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結婚をして、子供を生んだ後、極端に社会から離れてしまうのではなく、あるいは家計のことのみを目的に働くということでもなく、クリエイティブの世界としっかり繋がって活動しているお母さんたち。始まりは小さな輪かもしれませんが、力強い表現の輪が広がっていくのではないでしょうか。hahacolabの今後の活躍がとても楽しみです。
最後に母としてではない側面、活動への真剣な意気込みを感じられる言葉で締めくくります。
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江口/山口:子供が生まれたとき、新しい世界に入るようでちょっと嬉しかったんですよね。今までとは違う面白い世界と感じていました。一方で、今まで個人で培って来たものが活かされないもどかしさがあって。hahacolabは全員旧姓で活動しているのですが、それは個人として責任を持って取り組みたいという意識からです。とはいえ、私たちの活動は基盤に子育てや家族があって初めてうまれるもので、私たちがやりたいという気持ちだけで進めることはできません。私たちの活動は子供を想う気持ちと家族の支えで成り立っています。いろいろな方から声をかけてもらうところから始まっているので、感謝しつつ、その期待に応えられるようにしたいです。
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hahacolab
3331 Arts Chiyoda内 かえるステーションを拠点に、親子を対象にしたワークショップや創作活動を行うグループ。
イベント企画の他、地域の人々が気軽に立ち寄り創作活動を楽しむ空間作りを行います。
今後は、こどもといっしょにつくるアニメーションワークショップの開催など活動の幅を広げ、お母さん(もちろんお父さんも!)とこども達の毎日が、より素敵なものになるようなものづくりの提案をしていきます。
MEMBER: 江口よしこ, 山口レイコ, 石崎奈緒子