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札幌国際芸術祭2014 – vol.6 札幌芸術の森美術館

July 23rd, 2014 Published in 世界のフェスティバル

これまで紹介してきた市の中心部にある会場から離れて位置する札幌芸術の森美術館では、北海道立近代美術館と同テーマの企画展示「都市と自然」が開催されている。近代美術館からシャトルバスが出ているので、こちらを利用するのが便利だろう(運行状況などの詳細はこちら)。

札幌芸術の森美術館には、中谷芙二子の霧の彫刻の新作『FOGSCAPE #47412』が中庭を中心に設置され、10時〜17時まで30分おきに霧の彫刻が立ち現れる。館内では、砂澤ビッキ、平川祐樹、栗林隆らの作品が、木や森をモチーフとした多様な表現を提示し、さらに、宮永愛子、カールステン・ニコライ、トマス・サラセーノ、松江泰治らの作品によって、「自然」から「都市」へと鑑賞者を誘う展示構成となっている。

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平川祐樹『Vanished Forest』
今回の展示のために発表された新作のインスタレーション作品。札幌を訪れ、真駒内公園で切り株の調査と撮影を行い、消失された森を出現させている。

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栗林隆『ヴァルト・アウス・ヴァルト(林による林)』
木を原料とする和紙によって作られた白い林を、会場の空間特性にあわせて再構成している。

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宮永愛子『そらみみみそら(札幌)』
札幌の重要な水脈である豊平川上流にある地下深部から湧出する水の存在に着想を得て、陶器によるサウンド・インスタレーション『そらみみみそら』の新作を発表した。焼成された陶土と釉薬の膨張率の差異で生じる貫入は、微かな音とともに現れる。その音に耳を澄ますことが、札幌の水の由来と都市化の歴史に聞き入る行為へと昇華される。

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三原聡一郎『  鈴』
芸術の森敷地内に移設された有島武郎旧邸内に展示されている。

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ガラスドームに内蔵された放射線感知回路が、人間が本来知覚できない自然および人口の放射線を感知した時に、ドームに包まれたガラスのベル(風鈴)が鳴る作品。放射線という知覚できない存在を顕在化させている。

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宮永愛子『book -key-』
鍵を封じ込めた本をナフタリンでかたどった作品。三原の作品と同じく、芸術の森敷地内に移設された有島武郎旧邸内に展示されている。

野外美術館敷地内の森では、札幌の鳥カッコウを主題としたカノンを歌うスーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーションが、自然と共鳴する空間を創り出している。

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スーザン・フィリップス『カッコウの巣』
札幌市の鳥カッコウにちなんで、中世イングランドの有名なカノン『夏は来たりぬ』(Sumer is icumen in)を歌うフィリップスの声が、芸術の森屋外美術館の敷地内にある『樹木まんだら』の空間で夏の到来を告げる。この曲は6声からできており、それを忠実に再現した6チャンネルのサウンド・インスタレーションとなっている。6分35秒の歌が終わると、しばらくの間静寂が訪れ、風にそよぐ木々の音に包まれる。このインターバルも作品を鑑賞する際の重要な要素だ。

エキジビション:企画展示「都市と自然」

会場:札幌芸術の森美術館
日程:2014年7月19日(土)-9月28日(日)
時間:9:45-17:30(最終入場17:00) 9月は9:45-17:00(最終入場16:30)
担当:飯田 志保子(アソシエイト・キュレーター)

参加アーティスト
カールステン・ニコライ
スーザン・フィリップス
トマス・サラセーノ
三原 聡一郎
中谷 芙二子
宮永 愛子
平川 祐樹
松江 泰治
栗林 隆
砂澤 ビッキ

次回は、札幌駅からほど近くにある清華亭(せいかてい)での毛利悠子の作品展示を紹介しよう。

札幌国際芸術祭2014 紹介レポート一覧
vol.1 本日より開幕!開催テーマは「都市と自然」
vol.2 札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ) 
vol.3 北三条広場〜北海道庁赤れんが庁舎
vol.4 札幌市資料館
vol.5 島袋道浩作品その2〜北海道立近代美術館
vol.6 札幌芸術の森美術館
vol.7 清華亭(毛利悠子『サーカスの地中』)
vol.8 モエレ沼公園
vol.9 札幌大通地下ギャラリー500m美術館
vol.10 イベント紹介

 




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